東北大学病院 精神科

2021.02.06

小松浩助教による論文"Association between OLIG2 Gene SNP rs1059004 and Negative Self-Schema Constructing Trait Factors Underlying Susceptibility to Depression"がFrontiers in Psychiatry誌に受理されました。

要旨
うつ病をはじめ様々な精神疾患の病態にオリゴデンドロサイトの異常が関与していることが報告されています。遺伝的要因は、抑うつ症状などの状態像よりも、性格などの特性因子(trait factors)により大きな影響を与えると考えられます。
これまで自己に対する否定的なスキーマは、将来のうつ状態への発症リスクを高めることが先行研究で報告されています。我々は、オリゴデンドロサイトの分化に関わる転写調節因子であるOLIG2遺伝子の一塩基多型(SNP)の一つであるrs1059004が、脳内のOLIG2の遺伝子発現量、白質統合性、脳血流と関連する機能性多型であることを明らかにしました (Komatsu H, et al, Schizophr Bull. 2020)
本研究では、計546人の健常者を対象に、OLIG2遺伝子の機能性SNPであるrs1059004と、自己に対する否定的なスキーマと抑うつ症状との関連性を調査しました。自己に対する否定的なスキーマと抑うつ症状の評価には、それぞれBDI-IIとBCSSを使用しました。
本研究の結果、rs1059004 は自己に対する否定的なスキーマと抑うつ症状の強さとの間に、アレル依存的な関連があることを明らかにしました(図1)、さらに、パス解析によりrs1059004は自己に対する否定的なスキーマを介して抑うつ症状に影響を与えることが示唆されました(図2)。本研究により、うつ病への発症脆弱性に関わる自己に対する否定的なスキーマの形成において、オリゴデンドロサイトの機能を調節する遺伝的因子の関与が示唆されました。

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