予防精神医学寄附講座のホームページにようこそ。
本講座は、東日本大震災後の復興をメンタルヘルスの領域から後押しするために、精神疾患の予防や早期介入の視点から研究、教育、支援を行うために宮城県の寄附により東北大学大学院医学系研究科に設立されました。特に、震災後の心のケアにおいて中心的な役割を担うみやぎ心のケアセンターと連携し、その活動を支援することも大きな役割です。
東北大学精神医学教室は、発災直後からメンタルヘルス領域の災害支援に取り組み、被災地の病院や避難所に精神科医、心理士、看護師を継続的に派遣してきました。特に、災害急性期には、宮城県の関係者や宮城県障害福祉課と連携し、東北大学と宮城県との合同で心のケアチームを結成し、およそ1年間、継続的に被災地での支援活動を行い、また、全国の関係者との連携・調整役として災害支援に携わりました。しかし、災害後の復興にはその後の中長期的な活動が重要であり、地元の大学精神医学教室が地域に密着する形で活動を継続することに意義があると考えられました。そこで、この急性期での活動を引き継ぎ、直後期から中長期に向けた継続的な関わりを行うために本講座は設立されました。
本講座は、被災地の自治体、社会福祉協議会、医療機関を含む職場領域でのメンタルヘルス対策、支援者を対象とした疫学調査、被災者に対する心理支援方法の開発、一般市民向けの認知行動支援方法の開発、県内精神科医療機関での調査、心的トラウマに対する研究、心的トラウマを抱える人々の診療、教育機関との連携、認知行動療法の普及、若年者の精神疾患の予防や早期介入などさまざまな活動を行っております。また、災害時のメンタルヘルス対策に関わる各種学会、会議、委員会などでも活動しており、平成27年には第19回日本精神保健・予防学会を、平成28年には第15回日本トラウマティック・ストレス学会を仙台で開催、運営しました。また、平成28年4月の熊本地震では、宮城県DPATの3隊に人員派遣するなど、宮城県の災害支援活動に積極的に関わっています。
本講座は、東北大学精神医学教室の一員として、医学系研究科精神神経学分野と同病院精神科と一体となって東日本大震災後の研究、教育、支援活動を行っています。この活動は、To GEMS (Tohoku University, Department of Psychiatry, Great East Japan Earthquake Mental Health Support and Research)と呼んでいます。英語のgemという言葉には、珠玉、美しく貴重なもの、本当にいい人という意味があります。被災した東北地方とそこに住む人々を形容するのにまさにふさわしい言葉だと思います。私どもの活動が、こうした東北地方とそこに住む人々の復興に役立つとともに、東北地方の経験を後生の人々や世界の人々に役立つものへと発展させることを願い、引き続き活動を続けて参ります。
松本 和紀
予防精神医寄附講座 准教授(兼任)