SPRは、アメリカ国立PTSDセンターとアメリカ国立子どもトラウマティックストレス・ネットワークが開発した、災害復興期における被災者の回復を支えるための心理支援法です。これは、エビデンスがあると言われている介入から選ばれた6つのスキルで構成されています。
震災後の被災者支援にも適用可能と考えられますが、SPRは2011年6月に兵庫県こころのケアセンターによって日本語翻訳されたばかりで、まだ学びの場は多くありません。そこで、兵庫県こころのケアセンターの臨床心理士でSPR認定トレーナーである大澤智子氏を講師に招き、研修会を開催しています。また、実際SPRを活用したケース検討を通してのフォローアップ研修も実施しています。
最近では、2016年12月に2日間の基本研修が開催され、42名の方にご参加いただきました。研修後のアンケートでは、実際に被災者支援の場で活用するためにも、練習の場としてフォローアップ研修の開催を望む声が聞かれました。
平成25年度厚生労働科学研究費補助金 障害者対策総合研究事業精神障害分野「東日本大震災における精神疾患の実態についての疫学的調査と効果的な介入方法の開発についての研究」(研究代表者:松岡洋夫)の事業の一貫として、公開シンポジウムを開催しました。
東日本大震災の精神医療における被災とその対応―宮城県の直後期から急性期を振り返る―
(参加者数:111名)
<1日目>
開催日時:平成25年7月6日 (土曜日)
開催場所:宮城県建設産業会館 4階1・2会議室
開会の辞 16:00~16:10 松岡洋夫(東北大学)
S1 精神科診療所/地域支援の立場から 座長 松本和紀:東北大学
16:10~16:50 宮城 秀晃先生:宮城クリニック
16:50~17:30 原 敬造先生:原クリニック
17:30~18:00 総合討論
<2日目>
開催日時:平成25年7月7日(日曜日)
開催場所:宮城県建設産業会館 1階大会議室
開会の辞 09:30~09:40 松岡 洋夫(東北大学)
全体の概観 09:40~10:00 松本 和紀(東北大学)
S2 総合病院精神科の立場から 座長 富田 博秋先生:東北大学
10:00~10:15三浦 伸義先生:東北薬科大学病院
10:15~10:30岡崎 伸郎先生:仙台医療センター
10:30~10:50佐藤 茂樹先生:成田赤十字病院
S3 津波被害に遭った精神科病院の立場から 座長 浅野 弘毅先生:せんだんホスピタル
11:00~11:25 木村 勤先生:鹿島記念病院(元 恵愛病院医師)
11:25~11:50 高階 憲之先生:南浜中央病院
11:50~12:15 新階 敏恭先生:麻見江ホスピタル(元 光ヶ丘保養園医師)
12:30~13:30 :昼食・休憩
S4 被災地の精神科病院の立場から 座長 岩舘敏晴先生:国見台病院
13:30~13:50佐藤 宗一郎先生:こだまホスピタル
13:50~14:10連記 成史先生:三峰病院
14:10~14:30小高 晃先生:宮城県立精神医療センター
S5 精神科医療と関連する領域・組織の立場から 座長 小原 聡子先生:宮城県立精神保健福祉センター
14:40~15:00 姉歯 純子様:なごみの里サポートセンター
15:00~15:20 沼田 周一様:安田病院
15:20~15:40大場 ゆかり様:宮城県立精神保健福祉センター(元 宮城県障害福祉課)
総合討論15:45~16:30 座長 白澤 英勝先生:東北会病院、松本 和紀:東北大学
指定発言:金 吉晴先生(国立精神・神経医療研究センター)
加藤 寛先生(兵庫県こころのケアセンター)
パネリスト:三浦伸義先生、高階憲之先生、小高晃先生、小原聡子先生
思春期・青年期は精神的な健康のバランスを崩すことの多い時期であり、かつ精神疾患の好発時期でもあります。学校現場で問題となるいじめや不登校、自殺、非行、性的逸脱、学業不振、友人関係などの問題には、メンタルヘルスの問題が関与していることも多いと言われています。そのため近年では、教育現場においても、メンタルヘルスに関する知識や対人支援のスキルの習得が求められるようになっており、子どもの精神疾患の予防と早期介入を実現するためには、日常的に教育現場で生徒と向き合う学校教員がメンタルヘルスについての知識と技術を活用し、生徒の支援に役立てる必要があります。
特に、宮城県の被災地では子どもにも多数の犠牲者が出ており、被災体験をした子どもも数多く、震災の影響が子どもの精神健康に影響することも懸念されています。
本寄附講座では、教育現場におけるメンタルヘルス対策としては、日頃から子どもと接している現場の教員全体の知識やスキルを向上させるなどしてエンパワメントする方法に力を入れています。学校現場で、あらゆる教員がメンタルヘルスについての知識や理解を深め、対人支援の基本的なコミュニケーション・スキルを学ぶことにより、より多くの生徒に適切な支援を届ける可能性が広がることが期待できます。そのため、「教育現場における精神保健の階層モデル」(図 5)に基づき、一般の教員にスキルを学んでもらうための研修プログラムを考案し、実践しています。