東北大学病院 精神科

2020.07.10

小林奈津子先生のメンタルヘルスの観点から妊産婦に必要な防災・災害救援のあり方に関する質的研究論文がIJDRR誌に受理されました。

災害時に周産期の女性がどのような支援ニーズを持つかについて把握し準備を行う必要がありますが、従来行われている質問票を用いたアンケート調査に基づく量的解析でこのような情報を把握することはできません。この研究は、東日本大震災からの教訓を基に、災害時の周産期女性に対するメンタルヘルスケアにおける留意点を抽出することを目的として行われました。東日本大震災で甚大な被害を受けた沿岸部自治体である宮城県七ヶ浜町において、震災発災前後6ヶ月間に周産期にあった母親および母子保健に関わった自治体の母子保健従事者より、母親たちのメンタルヘルスにおける保護因子およびリスク因子に関するナラティブメッセージ(語り)を収集し、質的分析を行いました。特異的な支援ニーズとして、 (1)情報入手・発信手段の確保、(2)医療サービスへのアクセス維持、(3)周産期の母親や子どもに必要な物資の十分な供給、(4)衛生用品・施設の準備、(5)母親たちが罪悪感を持たずに済む関わり、(6)周産期や育児における肯定的側面に焦点を当てた励まし、(7) 母子専用の物資配給経路や個室の準備、(8) 平時の母子保健活動の速やかな再開の8つの留意点が抽出されました。今後、災害時における周産期女性のメンタルヘルスに配慮した防災や災害対応を進める上で考慮されると良いと思われます。

International Journal of Disaster Risk Reduction 51 (2020) 101767
https://doi.org/10.1016/j.ijdrr.2020.101767

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