東北大学病院 精神科

2020.07.16

内海裕介OTの被災地域における健康を意識した歩行習慣とメンタルヘルスとの関連を示した論文がSports Medicine-Open誌に受理されました。

災害後の身体活動と精神的健康の関連、また、身体活動を行うことに健康への意識が伴っていることの影響についての知見はこれまでにありませんでしたが、この度、宮城県七ヶ浜町に在住し、東日本大震災により大規模半壊以上の家屋被災にあった住民の方を対象に実施した2017 年度健康調査を元に解析を行いました。 歩行習慣や精神的健康についての質問に完全回答した718名を、健康を意識しているか否かでグループ分けした上で、一日の歩行時間が60分以上、30-60分の間、30分未満の3群間で、心理的苦痛、うつ状態、心的外傷後ストレス反応(PTSR)の指標となる点数の違いを交絡因子の調整や多重比較補正を行った上で比較しました。健康を意識して歩行している人は、一日の歩行時間と抑うつ症状は有意に関係しており、歩行時間が30分未満/日の人は抑うつ状態の点数は有意に高値でした。これに対し、健康を意識せずに歩いている人では、歩行時間と抑うつ状態との関連は認められない一方、歩行時間とPTSRの回避症状との間には有意な関係を認めました。本研究は、被災地域の健康増進施策を考える上で考慮するべきこととして、健康を意識して歩く習慣が抑うつ症状の低減に効果がある一方、 PTSRの回避症状が歩行習慣が短いことと関連していることを示唆していると思われます。

Sports Med Open. 6(1):30, 2020. doi: 10.1186/s40798-020-00259-6.  

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